隣の席の被り物系男子。
一瞬俯いて、麗は意を決した表情であたしにいった。
「なんで…。
なんで、斎藤くんに挨拶しないの?」
こんな…
こんなちっぽけなことなのに。
どうしてこんなにクラスがシーンっとしてるんだろう?
どうしてこんなに麗が辛そうなのかな?
どうして…。
どうして、あたしはこんなに揺らいでるの?
どうして…
斎藤は、何も気にせずに本読めるの?
ここまで来て、あたしは決意したことが揺らぎそうになる。
だめだよ。
逃げちゃだめだよ、あたし。
あたしは元に戻りたいだけなの。
ただのおっさん系女子に戻りたいの。
楽なんだよ。
楽になりたいんだよ。