大家様は神様か!
「帰んなさいって……隣じゃないですか」
「こんな真夜中まで、女の子が男の部屋にいるんじゃありません」
大家さんは私に若干潤んだ瞳を向け、諭すような口調で言ってくる。
けど、私も引くわけにはいかない。
「そう言うの、いいですから。折角作ったんで、冷める前に食べてください」
意地でもここから動かない、という決意を向けると、大家さんは諦めたように「食べたら帰るんだよ」と呟いた。
――――この人は、多分私の事なんかこれっぽっちも意識してない。
『女の子が真夜中まで男の部屋にいないの』
これはあくまで一般論であり正論であり、私を気遣っての言葉であり。
結局のところ、私は大家さんの中で『隣に越してきた』女子高生以外の何者でもないのだ。
彼がたまたま特殊な仕事をしていたから関われて入るものの、違う出会い方だとしたら私の事は記憶にも残らなかっただろう。
その、程度。