大家様は神様か!

スプーンで掬われたお粥が、大家さんの口の中に吸い込まれていく。

液状のご飯が喉に流れていき、やがて喉仏がゆっくりと上下した。


「ど、どうですか?」


おそるおそる尋ねると、大家さんは天井を見上げ、私には顔を見せないままグッと親指を立てる。

気のせいか私には、天を仰ぐ大家さんの目元に、一筋の涙を見た気がした。


「………これ、何入れたの…?」


震えた声で、大家さんがお粥の入った容器を指さす。

感動しすぎて涙が溢れたのか。

まるでお父さんだ。


「これですか?普通の具材だけで、オーソドックスな仕上がりだと思うんですけど」

「いや……隠し味的な」

「わかります?!」


隠し味、という言葉に、私の耳が過敏に反応した。

そう。今回も隠し味が決め手なのだ。


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