大家様は神様か!
記憶をたぐり、隠し味のボトルを思い出す。
「えーっと……はい、多分」
「それって、どこに置いてあった?」
「確か………」
「流しのシンクのところですかね」
他の調味料系とは全然違う場所にあったから、覚えていた。
大家さんは納得したように頷き、それからお粥に視線を落とし、労るようにお腹をさする。
「……それ多分、『油汚れも楽々落とせる!』って書いてある洗剤だよ……」
「え?なんですか?」
「ううん、何でもない」
大家さんが何か早口で呟いたのだけど、聞き取れなかった。
「あの、もしかして……」
さっきから大家さんの態度が少しおかしい。
隠し味を気にしたり、全然お粥に手をつけてない。
「………お粥、美味しくなかったですか?」
実を言うと、何回か米を焦がしたり水と間違ってポカリ入れたりと、小さなミスがあった。
急いで食べてほしくて味見をしていないから、本当は不味いのかもしれない。
すがるように大家さんを見ると、彼はいつもの笑顔を浮かべた。