大家様は神様か!
「………えーと…」
いわゆる、お姫様だっこに近い体勢。
気づかないうちに、私の着地点にこの人が来ていたのか。
「どうしたの、君。自殺?」
……綺麗な人だ。
無造作に跳ねた黒髪は癖っ毛で、ふわふわ。
髪と同じくらい黒い瞳は吸い込まれそうな引力を持っていて、至近距離で見つめられるとなんだかドキドキする。
あまり焼けてない肌、通った鼻筋、薄い唇。
整った顔立ちに釘付けになり、思わずまじまじと見てしまった。
「……俺の顔、何かついてる?」
「えっ、あ、いや」
ふと意識が現実に戻り、ぶんぶんと首を振る。
「すみません、あ、重いですよね。降ろして頂いても……」
「え、うん。別に軽いからへーきだけど」
黒目がちな瞳が瞬きを繰り返して、私の足が地面についた。
彼から煙草の香りがして、思わずドキドキしてしまう。