大家様は神様か!

「ぐ、ま、まあそういう事なんですけど」


人が必死こいてオブラートに包んだ要求を、どうして的確に突いてしまうのか。

直感した。

多分この人はKYだ。


「ふ―――ん。じゃあどうしてほしいの、華火ちゃん」


物が散乱した部屋にぽつんと置かれたちゃぶ台。

それに頬杖をつき、口角をにやにやと上げた大家さんが瞳を私に向ける。


その質問に、いよいよ誤魔化せないと悟り、私は俯きながら呟いた。


「……敷金なるものをですね、ご勘弁願いたく……」

「敷金なくすだけでいーのー?」


言葉に含みを持たせ、大家さんが更に楽しそうに言った。

ちらりと覗き見たら、愉快気に細めた目と視線がぶつかる。

こいつ、Sだ。

< 28 / 144 >

この作品をシェア

pagetop