大家様は神様か!
「華火さーん、まーだですかー」
「華火さーん、何に時間かかってんすかー」
「華火さーん、急いでもらえませんかー」
「ちょっと待ってくださいってば!」
リビングから聞こえてくる大家さんの催促に返事をしてから、首元のネクタイを緩める。
学校じゃないから付けなくてもいいんだけど、無いと落ち着かないのだ。
外は暑いからとか何とか言って家に上がった大家さん(自分の家に戻ればいいのに)のいるリビングに出るため、襖をガラリと開ける。
「………えー、制服ー?」
麦茶を注いだコップを片手に私を見た大家さんが、不満げな声を出した。
私はそれに、怒りを込めた笑顔で答える。
「ええ、生憎これしか外に出る服は持っておりませんの。正装ですから、問題ないです」
「隣歩いて俺がつまんな……」
「しょうがないでしょう、これと寝巻きしか持ち出せなかったんですから」