大家様は神様か!

「華火さーん、まーだですかー」

「華火さーん、何に時間かかってんすかー」

「華火さーん、急いでもらえませんかー」


「ちょっと待ってくださいってば!」


リビングから聞こえてくる大家さんの催促に返事をしてから、首元のネクタイを緩める。

学校じゃないから付けなくてもいいんだけど、無いと落ち着かないのだ。

外は暑いからとか何とか言って家に上がった大家さん(自分の家に戻ればいいのに)のいるリビングに出るため、襖をガラリと開ける。


「………えー、制服ー?」


麦茶を注いだコップを片手に私を見た大家さんが、不満げな声を出した。

私はそれに、怒りを込めた笑顔で答える。


「ええ、生憎これしか外に出る服は持っておりませんの。正装ですから、問題ないです」

「隣歩いて俺がつまんな……」

「しょうがないでしょう、これと寝巻きしか持ち出せなかったんですから」

< 49 / 144 >

この作品をシェア

pagetop