大家様は神様か!

やっぱりネクタイはきつい。

第2ボタンまで開けてカッターシャツの中に風を送り込もうとするも、失敗に終わった。

熱を集める紺のハイソックスを忌々しく睨んだが、白になるわけでもなく。

30秒で汗が滲み出るような気温に耐えつつ、家の鍵をかける。


「というか最近、華火うちに入り浸ってない?」


前を歩く大家さんの言葉にこの数日を振り返った。

確かに言われてみれば、ほぼ毎日ピンポンしている気がする。


「だって、大家さんの家にはクーラーついてるんですもん」

「ふーん」


アパートに備え付けられてる駐車場につき、大家さんは黒いボックスカーの前で足を止めた。

ポケットから鍵を取りだし、ドアを開く。


「今日の趣旨は、車の中で説明するね」


ごく自然に助手席に座らされ、気がついたら車が発車していた。


こういう行動を見ると、何だか女慣れしてそうなんだよね…。

純愛小説家なんてしているんだから、そりゃ女性経験あるんだろうけど。

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