大家様は神様か!

シャラ……と金属の触れ合う音が聞こえて、それから耳元が熱くなった。


囁くような、惑わすような、少し掠れた声が鼓膜を揺らす。





「………………深い愛って意味がある」





大家さんの大きな手がアクアマリンの位置を調節し、満足気に離れた。

体温が遠退き、それがもの悲しくもある。


「正しくは『慈愛』とかって言われるんだけど、そんな変わんないよね」

「……知らないですよ」


ほら、と誘導されて、私は仕方なく姿鏡と向き合った。

私の肩に手を置いた大家さんが、鏡の中から「どう?」と目で言ってくる。


けして主張しない、素朴で可憐な輝き。

だけど確かにそこで光る、何とも言えない魅力があった。

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