大家様は神様か!
振り返らなくても誰かわかる。
むっちゃんの幼馴染みだ。
「はい、頼まれてた焼きそばパン。10個限定の方でよかった?」
「おー!やっぱ樹(いつき)はいい仕事するで、ほんま!」
斎藤 樹。
私はいっくんと呼んでいる。
「いつも大変だね、いっくん」
「もう慣れましたよ」
「くぅーっ、いつ食べても美味いなあ!」
穏やかな笑顔で去っていった隣のクラスの柔道部主将に手を振りながら、焼きそばパンに食らいつくむっちゃんを見た。
「相変わらずだよねえ、むっちゃんといっくん」
「何がや」
驚くべきスピードで食べ終わったむっちゃんは、いちごミルクの残りを一気飲みして、ぷはぁと女子高生らしくない声をあげた。
黙っていれば学年でもトップクラスの美少女なのに、勿体ない。
「むっちゃん、喋らなかったら完璧なのに」
「華火は料理ができたら完璧やな」