大家様は神様か!

「ユウ先生って言ったら、言わずと知れた、奇跡の純愛小説家やで!繊細な恋心ともどかしい男女の恋愛模様を美しい文章で書き表す、その才能に惚れ込んだ出版社が先生の作品を取り合い激戦を繰り広げてるっちゅー話や」

「へ、へー……」

「特に代表作の『金平糖が愛した時間』なんて、全国で何百万人が涙を流したと思うとるん?ユウ先生はきっと心の澄んだ方に違いない」


何だかとても夢見ているむっちゃんに、本人はボサボサ頭に寝巻きのままで煙草吸ってるようなモノグサ野郎とは言えなかった。

隣の大家さんの職業をむっちゃんに言わなかった過去の自分、ナイスジョブ。


「そ、そんなすごい人なんだ」

「なんや華火、もしかして興味あるんか?貸したろか?」


うっとりとした顔から一転、むっちゃんとの距離が近くなった。

嬉しそうに聞いてくるむっちゃんから目をそらし、明後日の方向を向く。

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