今日も君に翻弄される。
『和泉くんは悔しいって感じたことある?』


葵は散々迷った挙げ句、この文に決定したらしい。


やっと返事が来た。


悔しいって感じたことある? か。


『あまりないかな』

『じゃあ、悔しさは人を高めないよ!』

『そんなことない』

『でも和泉くん、かっこいいし頭いいし何でもできるし、悔しさなんかいらない人の最前線にいるよ』


いい例だよ、じゃない。


……何、これは。


僕は密かに頭を抱えた。


褒め殺しとか無自覚とか止めてくれないかな、本当に。


どう返せば良いのかなんて、僕の辞書には載っていない。


知らず知らずのうちに手が止まった。


『僕は、ね。葵にその事例は当てはまらない』


何とか減らず口で返したのに、また。
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