今日も君に翻弄される。
初めから、ずっと。


僕ばかり好きかもしれない、という不安は拭えない。


どんなに消したくても、僕にも分からぬ身体のどこかに、それはしかと根を下ろしたまま、抜けない。


先に隣を願ったのは僕だった。


夕凪を連れてくる葵に、付き合って欲しいと告げたのは僕だった。


事実は曲げようがないというのに、天の邪鬼な僕は今更意地を張る。


その陰であまり会えない現状に怯えて、好きだよと伝えるには勇気が要るから妥協する。


でも。


たまには頑張ってみようか。


『話は変わるけど』

『うん、閑話休題!』

『葵を海の泡なんて儚いものにしてしまうくらいなら、葵の代わりに僕がなろう』


物語の王子のように、無様な姿はさらせない。


恩人を間違える愚行はおかさない。


言えない気持ちを込めて、送れば。


『えっ、いいよわたしがなるよ!』


葵から真剣に慌てた返しが来て笑った。


駄目だよ、葵じゃ不安だ。僕がなる。
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