今日も君に翻弄される。
『いいよ、いらないよ!』


笑い話で終わる予定だったのに、変な方向に進んでないかなあ、これ。


わたわたと拒否するも、和泉くんは興味津々。


ぜひとも読んでみたいらしい。


言うんじゃなかった。


……そうだよね、交換条件出すくらいだもんね。


和泉くんのレポートなんて一行とかに決まってるけどね!


ぶんぶん首を振り、一人で懸命に携帯を握り締める。


見えはしなくても、雰囲気は伝わるはずなのに、


わたしなんてお構いなしに追及する和泉くんは、きっと鉄面皮だ。


『葵』


諭すような催促。


和泉くんの場合、名前呼びなのがずるいと思う。


こういうときくらいしか、名前を呼んではくれないから。


心がぐらついて仕方ない。


でも考えてみようわたし、

ちょっと冷静になろうわたし、


和泉くんだよ!? 和泉くんなんだよ!?


……やだやだ、絶対やだ!


『葵』

『やだ!』

『葵』


嫌だ、




「葵」
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