今日も君に翻弄される。
和泉さんは固まってティッシュを凝視している。


すみません、本当すみません、変なやつの自覚はあります……!


「……ありがとう、ございます」


そっと呟いて受け取ってくれた和泉さんに安堵する。


こんな怪しいわたしからで申し訳ないけど、とりあえずいざとなったら使ってください。


……間に合ってよかった。


ちょうど逆の端の列から、係の人が問題を配り始めていた。


順に回ってきた係の人が和泉さんに問題を渡して、和泉さんはそれを一部取って振り返り、

ふりかえ、り、


のわあわたしか!


「すみません!」

「いえ」


慌てて受け取る。


わたわた後ろに回して前を向くと、和泉さんが鼻をかんでいた。


頬が緩んだわたしにちらっと目礼してくれる。


あんなにおかしな渡し方をしたのに受け取ってくれて、嫌がらずに使ってくれて。


結構恥ずかしかった、勇気も必要だった。


それが報われたようで、


ありがとう、と言われているみたいで嬉しかった。
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