今日も君に翻弄される。
一通り受け終わって、水筒からお茶を飲み、ほっと息を吐く。


「ありがとうございました」

「いいえ」


筆箱をしまわずに待っていてくれた、帰り支度をしている和泉さんに急いでお返し。


それでは、と言うように律儀に頭を下げた隣の人。


「…あの!」


鞄を肩にかけかけた和泉さんを慌てて引き留める。


「わたし次から鉛筆にします! ……じゃなくて、えっと」


急ぐあまり変なことを口走りつつ、おやつを詰めているポーチを開ける。


えっと、とりあえず、疲れてるときは糖分補給だよね。


特別甘い飴を取り出して、そっと差し出す。


「あの、飴大丈夫ですか? これ、よかったらお礼にどうぞ」

「いえ、お気遣いなく」

「……えーと」


お気遣いなくって言われちゃうとどうにもできない。


いやいやいや! とか押しつけたら失礼だしなあ。

でもお礼はしたいんだけどな。


弱って眉を下げるわたしに、すみません、と和泉さんは小さく苦笑した。
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