今日も君に翻弄される。
英語筆記、リスニング、数学、と。


えっと、丸丸丸、丸、丸、バツ、


赤ペンが止まる。


ん? えっと。

え、何でこここうなるの?


ペン先を空中に向けたまま、じっと解説をにらむも、解決しない。


ひどい。


解説なのに、問題が簡単だからなのか説明が足りない、途中式が抜けてる……!


何てことだ、えーっと、分かんないぞこれ。


ばたばた鞄から問題集を取り出して、類題を探す。


多分この辺にあったはず。


はず、なんだけど、焦ると見つからないもので、お目当ての問題が全然ない。


類題があれば解説を読んで解けるのに!

何でないのー!?


問題集を何周もめくっていると、和泉さんに気づかれてしまった。


「あの、数学は得意ですし、俗解で良ければお教えしますが」

「ぞっかい?」


首を傾げたわたしに、和泉さんが噛み砕いてくれる。


「ええと、学問的でない通俗的な解説でしょうか」


……つまり、和泉さんは数学が得意で教えられるから、聞いたら解説してくれる、と。


解説も、何とか線を求めるため何とかの定理よりAとBが、とかじゃない、と。


…………なんてすてきなんだ。


「お願いします!」

「承りました」


がばりと頭を下げたわたしに、和泉さんは実に頼もしく頷いた。
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