今日も君に翻弄される。

Ⅷ 間違いが判明しました

雪模様が続いたこの頃としては珍しく、からっと晴れた気持ちのいい天気。


わたしは若干のむなしさとともに、模試会場に来ている。


せっかく晴れたのになあ……。

模試なんて。模試なんて!


ぐおお、と内心悔しがる。


エレベーターを降りてすぐの部屋が会場。十階会議室。


今日は有名模試で一般の人も多く受けるからか、建物を一つ貸し切っている。


人波に酔いかけながらたどり着き、係員の方に軽く頭を下げて、扉を開けてもらって。


その人を見つけた。


席はまだまばらにしか埋まっていないけど、知らない誰かのお隣より、彼のお隣がいい。


足取り軽く歩み寄る。


「隣いいですか」


控えめに声をかけると、微笑んだその人は了承を示すように頷いて、


「どう、ぞ」


こちらに視線を向け、声をかけたのがわたしだと気づいて、少し目を見開いた。


お、覚えてるよね、隣座っても変じゃないよね!?


和泉さんの反応に今さら怖気づく。


もしかしてお友達とか来るんだろうか。


「あ、えっと、お、おはようございます」

「おはようございます」


無難に挨拶してみると、きちんと挨拶が返ってきた。


嫌そう、では、ないのかな……? うん。


多分大丈夫、だと信じたい。
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