今日も君に翻弄される。
和泉くんが、

大好きな和泉くんが、


好きとか、……好きとか言うものだから、動揺するじゃないか。


普段言わない人がそんなことを言って。

それが当然のような落ち着きぶりで。

無意識にぽろっとこぼしたらしくて。


多分、きっと多分、明らかな本心で。


わたしが好きなものを好きって言ってくれるってつまり、そういうことでしょう。


赤らむ顔を必死で俯けていると、和泉くんは再び何げない口調で言った。


「だから。基本葵が好きなものは好きだってば」

「っ」


今度こそ体温が急上昇。


アイスはひどく優しく冷たかった。


「和泉くん大好き」

「はいはい」


ごまかすみたいに本心を告げれば、素っ気ない返事がすぐさま返ってくる。


「そんなこと、とっくに知ってる」

「(っ、いずみくんのばかばか、このやろう……!!)」


勝てない、と思う、暑い夕べ。
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