今日も君に翻弄される。
「あの、わたし、ここで待ち合わせしてるので」


動けないと控えめにお断りしてみた。


「じゃあその人来るまで時間つぶしませんか。休憩場所使っててもいいですし」

「えっと」

「ずっと立ってたら疲れるでしょう? 入り口近くに座れば、その人が来たらすぐ見えますし」

「えーっと……」


にこやかに言われても、頷くわけにはいかないのだ。


絶対絶対、駄目なのだ。


座ったら最後、目の前で配られるお菓子に釣られてしまうのは自明の理。


だめったら、だめなのだ。


「いえ、あの、もうすぐ来ると思うので」


我慢、我慢しようわたし、


「じゃあその方来たらぜひご利用を!」

「え、あ、はい、相談し」

「――僕は嫌だ」


よく知っている声が、不機嫌に響いた。
< 211 / 261 >

この作品をシェア

pagetop