今日も君に翻弄される。
「化学部行きたいです」


にっこり笑顔で言ってみる。


「…………別に面白くないよ」


長い沈黙の後、絞り出すようにそう言った和泉くんに、佐竹さんが抗議した。


「ちょ、せんぱっ、何自分の部活否定してんすかあああ!?」


うん、わたしもそう思います。


せめて一つくらい褒めとくべきだよ。


「そんなことないよ、それにせっかく誘ってもらったから」


お願いを重ねるわたし。


「彼女さん……!」


嬉しそうな佐竹さん。


「…………」


苦く沈黙する和泉くん。


「駄目だったら諦めるけど、でも、行ってみたいんだけど、駄目かな」


黙り込む和泉くんに、もう一回お願いしてみる。


「和泉くん」

「…………」


困り顔で、でも顔を上げてくれた。


説得の許可が出ているんだから、説得してみよう。
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