今日も君に翻弄される。
結構真面目に和泉くんの体調を心配し始めたわたしを、当のご本人は迷いなくぶった切った。


「葵の味覚がおかしくなったかと思って」

「え」

「食べ物って呼称ならなんでも口にしそうだから、不安だ」

「違うよ! お菓子は別腹ってだけで、」


わたしだって、いくらお菓子って名前だからって全部美味しそうに見えるわけじゃないもん。


あんまり見た目が怖いものとか、真っ黒焦げのものとか、全然食べたくないよ!


「(どうだか)」


不審なジト目がびしばし突き刺さる。


「ひどいよ和泉くん!?」


えぐえぐと泣き崩れながらもレジに並ぶと、あ、と和泉くんが列を外れた。


「どうしたの?」

「僕もちょっと買ってくる。入ってきた方の入り口で待ち合わせね」


後ろ姿でそれだけ言い置いて、商品棚にまぎれてしまった。


追いかけたかったけどぐっとこらえる。


「次の方」

「あ、はい」


意外と高かったお会計をぎりぎり何とか済ませ、指定場所に向かう。


ベンチがあったので座って待つことにした。
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