今日も君に翻弄される。
「(何買ったのかなー)」


ごそごそ、お菓子の整理をして待機していると、和泉くんがドアから出てきた。


思わず目を遣るけど、手元に袋はない。


和泉くんのことだから、二つ持つのは非効率だ、


とか言って鞄に入れたんだろう。


「遅くなってごめん」

「ううん、大丈夫」

「行こうか」

「うん!」


忠犬よろしく後ろを追いかけると、


「葵」

「うん? わっ」

「遅いよ」


和泉くんが手を引いた。


でも体勢は崩れないんだから、わたしの運動能力の限界をよく分かっている。


「何でそんな後ろにいるの」


ごめん、と謝るのは愚策だ。


黙って手を引かれるまま隣に並ぶ。


優しい口調の『何でそんな後ろにいるの』は、和泉くんの分かりにくい『隣来て』と同義。


指摘したり質問したりしちゃったら、違うって言い張るに決まっているけど。


怒られないように、緩んで仕方ない口元をとりあえず引き締める。
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