今日も君に翻弄される。

Ⅻ 大好きはいつまでも

桜はまだ咲かないけど、もう随分陽気な天気が続いている。


柔らかに吹く、ほんの少し温い風。

青よりは水色の空。

ざわめく木々の葉も、新しくなったものばかり。


一つ学年が変わる頃――卒業式の、季節だ。


卒業式も終業式も終わり、待ち合わせ。


今日はご飯を食べに行く予定。


道を歩けば、どこもかしこも、寂しげに見える。


この付近は学校が多いから、生徒が同じ時間帯にたくさん歩いている。


この雰囲気は、卒業生と思しき人たちが無意識に目に入るからかもしれなかった。


「来年はああなるんだねえ」


感慨にふけるわたしとは対照的に、こんなときでも和泉くんはマイペースに冷静だ。


「その前に受験勉強」

「が、頑張ります」


うん、と柔らかく頷く和泉くん。


和泉くんは計画性があるうえに真面目だから、推薦を狙っているのだと聞いた。


「葵は大学どこ行きたいの」

「とりあえず学部は教育学部希望かなあ」


今のところ、将来の夢は少し曖昧。

小学校の先生になりたいなってぼんやり考えてるくらい。


大学は、楽しそうなところがいいなあ、と思っている。


できれば和泉くんと会いやすい距離のところがいいな。
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