今日も君に翻弄される。
『というか、名前表示されるんだけど。何で名乗ったの』

「和泉くんだって名のったよ!」


小さな反論は、和泉くんにとっては全くもって意味をなさなかった。


『僕は葵に合わせたんだよ。ほら早く用件を述べなよ』


和泉くんは実に素っ気ない。


尋問か、尋問なのかな、これは……!


やっと数学を教えて欲しいと頼むと。


『僕は忙しい』


ぴしりと返された短くて冷たい回答にへこたれる。


「だって分からなかったんだよ」

『先生に聞きなよ』


最もな意見。


和泉くんは何としても教師役を逃れたいと見える。


……似合うのに。


「もう聞いたよ、でも分からなかっ」

『葵』

「うう、馬鹿なんて言わないでー! 自覚はあるから傷口に塩を塗らないでー……!」


ぎゃあぎゃあ騒いで耳を塞ぐ。


これ以上深手を負いたくない。
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