今日も君に翻弄される。
待ち合わせ場所には、結局遅れて到着した。


「…っ、は、はあ……!」

「葵」


和泉くんがこちらを向く。


その瞳を見るのが怖くて。

呆れられていたら、怒っていたらどうしようと、不安で。


冷めた目に耐えられる自信がなくて。


駆け寄った勢いで俯いたまま、遮る形で謝った。


「遅れてごめん。あの、待った、よね……?」


ぼそぼそ話すわたしを呼ぶ、和泉くん。


「葵」

「…うん」

「葵、顔上げて」


怒ったような呆れたような、とにかくいつもとは違う和泉くんに、肩が震えた。


でも、見逃してはくれない和泉くんが、うじうじいつまでも迷って顔を上げないわたしに溜め息を吐く。


長くて短くて、促す溜め息。


「葵」

「はいぃ……!」


ゆっくり顔を上げた先には、優しく笑う和泉くんが、いた。
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