今日も君に翻弄される。
「(え、……え?)」


混乱して、

答え合わせのように和泉くんを見て、

だけど答えはもらえなくて、


やけくそで。


「っ、……待ちましたか!」


再びの、震える問いかけに。


「そうだね」


和泉くんは重々しく頷いて、ちらりと時計を見た。


学校指定のワイシャツの袖に見え隠れするそれは、和泉くんによく似合う、やっぱりおしゃれな腕時計だ。


「ごめんなさい、帰らないでー……」


怒っているのかと思い謝れば、苦る和泉くん。


「葵、時計見て」


自分の腕時計をわたしに向けて突き出す。


でも和泉くんのを見るまでもない。
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