今日も君に翻弄される。
ふん、なんて効果音が聞こえそうな感じで頬杖をつく和泉くん。


少し不機嫌な横顔にびくびくする。


……まだ何かあるのだろうか。


わたしの心はガラス製なので、取り扱いには注意が必要……なんだけど。


仏頂面の彼氏様には、


「葵にそう思われていたなんてとても不本意だ」


――止めるつもりは欠片もないらしい。


「僕が葵を置いて帰る? そんなことは有り得ない」


はっ、と鼻で笑った和泉くん。


「僕の中で優先すべきものなど葵以外に存在しない」


忙しいからと言ったのは、葵は無責任な人間が嫌いだと思ったからだから。


「いず」

「心配なんかしなくても、十分くらいなら待とう」

「(許容範囲狭いよ、狭すぎるよ和泉くん!)」


心中突っ込んでみたものの。


きっと和泉くんだって、それは分かっている。


おそらくわざとで、さらに言うならば、ほぼ間違いなく照れているからに違いなかった。
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