今日も君に翻弄される。
……眉間にしわ寄ってる。


ひょいひょいって、何でも楽々とこなしそうな和泉くんなのに。


滅多に見せない険しい顔つきに釣られて、わたしまで眉根が寄った。


和泉くんにも大変なことってあったんだなあ……。


阿呆丸出しな感想が浮かんだ脳内は、首を小さく振って、一旦リセットする。


ああでも、和泉くんをも困らせる論文って、どんなのなんだろう?


結果。


本の上から少し身を乗り出して覗き込んだノートには、ちまちまと、紙面が真っ黒に見えるくらいのものすごい量の文字の羅列があった。


……恐怖だ。これは恐怖のノートだ。


わたしは旺盛な好奇心を激しく後悔した。
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