今日も君に翻弄される。
なんてことを、何てことを言うんだこの人は……!


相変わらず甘ったるい言葉を放つ瞬間が捉えられない。


わたしは一人俯いて悶えた。


頬全体が色づいてきてしまったところで、肝心なことを思い出してはっとする。


そう、今大事なのは論文だ、論文。


「論文書いてください。終わらなかったらどうするの」

「どうもしない」

「わたしがどうもするよ……」


期限に間に合わない、なんて。


そういう事態は和泉くんに限ってないと信じている。

信じているけど、時間を消費させちゃったのは確かにわたしで、……だから、つまり、その。


何だか申し訳ないじゃないか。
< 58 / 261 >

この作品をシェア

pagetop