今日も君に翻弄される。
「葵」


確かな呼び声に、何となく心が落ち着いた。


和泉くんと視線を合わせるべく、返事をして、そちらをしっかりと振り向けば。


「……のわっ!」


唐突に眼鏡をかけられた。


「ななな、なに!?」

「ふむ」

「ふむ、って何……!?」


一人で納得しないでください和泉くん!


おかげさまでわたしは全然納得できないんだけど!!


何故だか全く説明してくれないなんてひどいよ。


ぶうぶう、と、幼稚にふて腐れつつ奮闘する。


わたわたするわたしには、和泉くんのサイズではちょっとだけ大きかった。


そろり、視線だけを動かしたはずなのに、すとん、と、レンズが鼻の頭までいささかずり落ちる。
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