今日も君に翻弄される。
和泉くんの厚意を無駄にしてはいけない。


頑張ってもらう時間を長引かせてはいけない。


……よし。


高いところで薄く漂う、真っ白い雲と、冴え渡る青空を仰いで、祈るみたいな深呼吸を、二回。


小さく小さく、した。


「……和泉くん、一ついい?」

「うん」


慎重に出した声は、何とか震えなかった。


安堵しつつ、俯いていた顔を上げる。


「和泉くんだって充分生真面目だし理屈を好むと思います……!」


やっとこさ調子を取り戻したわたしの談を、


「そんなことはない」


和泉くんははっきりと否定した。


「ある!」

「ない」

「ある!」

「ない」

「あ、」

「いいから葵の番」

「(……誤魔化した!?)」
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