今日も君に翻弄される。
怒るわたしをものともしない和泉くんが、何度目かの冷たいあしらいをして。


でも、さりげなく車道側を歩いてくれていたり、返しが単文じゃなかったり。


気づいたわたしが急に上機嫌になったり。


騒がしい下校は体感的には短くて、そうこうしているうちに到着した。


「ね、ねえ和泉くん」


凝視するわたしの呼びかけに、何の気負いもなく受け答える和泉くん。


「うん」


怖じ気づくわたしとは対照的に、彼氏様は涼しい顔で玄関を目指している。


ひょええ、わたし、口ぱくぱくするよー!


遅れまいと、ギクシャク、何とか足を運んで前進するも。


右手と右足が同じタイミングで出てしまうとか、わたしは不器用なのかな、不器用なんだね……!


和泉くん慣れ過ぎだよ。


だって、こ、

こ、


「これは何ですかっ……!」


まあ驚くのも当然。


わたしの目の前には、


「僕の家」


そう感想を抱くのはやむを得ないほど立派な大豪邸が、鎮座ましましておりました。
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