今日も君に翻弄される。
後ろ手で扉を閉めた和泉くんの背後に、色とりどりの光がたゆたっている。


真っ黒なドアのドアノブの側に縦長のくぼみがあって、はめられたステンドグラスが、反射してきらきらしいのだ。


綺麗に揃えられた和泉くんの靴のお隣に、ささっとわたしの靴を陳列する。


……和泉くん足大きい。


一度たりとも意識してこなかった事実は、不思議な感傷を生じさせた。


「僕の部屋はこっち」


カーペットが敷かれた螺旋階段の一番下で、上を指しつつわたしを呼ぶ和泉くん。


あ、このふかふかなカーペット、和泉くんの眼鏡の色だ……!

好きな色なのかな。


圧倒されて、思考も視線も、激しく目移りする。


「葵」

「あ、うっ、うん!」


はっとして意識を戻し。


ぱたぱたと、唯一の取り柄を活かして、元気に駆け寄ってはみたけど。
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