名前を教えてあげる。
頭と身体が分離していて、朝起きると勝手に手足が動いて登校していた。
席に着くと、いつの間にか授業の科目が変わっていた。
噂は水面下で、日ごとに広まっていた。
美緒は誰とも口をきかなかった。
今では、クラスの全員が美緒を敬遠するようになった。
間柴真由子ですら、美緒と目を合わせようとしない。親友だったことが今では信じられない。
弁当も休み時間も1人。
その方が気楽で良かった。
11月は文化祭があったけれど、幸い美緒のクラスは展示物だったので、消極的に参加して済ませた。
教室には、もう誰もいなかった。
少し開けた窓から、校庭で活動する運動部の生徒達の掛け声が聞こえてくる。
「……よいしょっと…」
美緒は怠い身体を励ますようにして、独り言を言って、椅子から立ち上がった。
妊娠しているのだから、身体が重いのは当然だ。
でも、あまりグスグズしているのは良くない。
長期欠席をしたあとは、今よりも居づらくなるに違いない。
今度は、学校中で美緒が中絶したという噂が立つだろうから。…それは事実なのだけれど。
「あ…」
自分の下駄箱に入れた上履きが随分と汚れているのに気付く。