名前を教えてあげる。
「見て」
順は、地面に置いたスポーツバッグを膝に乗せた。
ジッパーを開けると、ガサガサと中からA4サイズの茶封筒を取り出した。
「400万ある。うちの引き出しから盗んできた。三田村学園に渡す金だ。
あと俺の預金口座に200万くらい入ってる。これだけあれば、当分生活出来るし、出産も出来る。さ、行こう!」
順は、立ち上がった。
急な展開に美緒は戸惑う。
「行こうって、どこに?」
「あてがあるんだ。しばらくそこに置いてもらう。
美緒、1度学園に帰って必要な物、持ってこいよ。とりあえず旅行みたいな感じの準備でいいよ」
「……」
美緒は座ったまま、泣いていた。
でも、嬉しくて仕方なかった。
「…順が一緒にいてくれるなら、私、頑張る…赤ちゃん守るよ……」
指先で涙を拭いながら、久しぶりに笑っていた。