名前を教えてあげる。
「嘘ぉ!見えないね……
すごく若く見える。25歳くらいかと思った」
「それは言い過ぎ!
でも、良かったな。知り合いの大学病院の産婦人科の医者、紹介してもらえることになったし」
「うん…」
「どうしたの?まだ心配なことがあるの?」
順が身体を少し起こし、美緒の顔を覗き込んだ。
「学校……美緒も卒業したい?」
暗闇に目が慣れてきて、デジタル時計の青白い光だけで、少し周りが見えるようになってきた。
「…ううん。もう学校はいい。
いろんな噂されるのももう嫌だし。
それよか、園長先生とかみどりちゃん、怒ってるかなあって。警察に届けたりしたのかなあ…」
順の左手が動き、美緒の右手を捉える。
美緒もそれに応えるように、右足を順の脚の間に差し入れた。
掛け布団の中で絡み合うような格好になる。
「事件性のないただの家出人を警察は必死に捜したりしないよ。俺と一緒だって分かってるから、学園からうちに連絡が行くかもね。
俺は、うちの母親がまた暴言吐かないか心配なんだよな…」
順がため息のように言った。