名前を教えてあげる。
順の美しい母。
以前、順の家で挨拶を交わすたびに、わずかに歪んで見えた眉頭は、気のせいではなく、美緒を忌み嫌う気持ちが隠し切れなかったからだ。
今は、美緒も順の母親に対しては嫌悪感しかなかった。
会話の中に出ることすら嫌だった。
もちろん、そんなことは順に言えないけれど。
「あの人、すげえ完璧主義なんだよ。
悪い人じゃないんだけど。
7歳も年下なのに、父親も頭が上がんない。
俺が小さい頃はうちに家政婦がいたけど、どの人も気に入らなくて、結局皆辞めさせた。自分でやる方がまだマシだって。今は掃除だけは、業者に頼んでるけど」
「ふうん…」
他人に優しく出来ない人間が、家族に対しては献身的に尽くせるのが美緒には不思議だった。
「母親ってそんなものなのかな…」
美緒が宙に呟いた時、順の手が美緒の手を離した。
「え?え?嘘でしょ?」
美緒は驚く。
一旦離れた順の右手は、美緒の右胸を愛撫し始めたから。
「だめ、無理だよ…お腹大きいから、出来ない」
「そんなことない。安定期なら平気だってネットで見た。お腹を圧迫しないように優しくするから!」
美緒の身体をまさぐり始めた順は、すでに我慢出来なくなっていた。