名前を教えてあげる。
17歳の冬⑵・愛の誓い
フフ、フフフ〜ン♪……
鼻歌を歌いながら、美緒はリビングで写真の整理をしていた。
去年流行ったアイドルグループのクリスマスソング。
内気な女の子が恋の成就を願う歌詞のそれは、美緒の大のお気に入りだ。
季節はずれのそんな曲が浮ぶのは、テーブルに広げた写真のせいで、順と作った思い出が蘇ってしまうから。
人には絶対に言えない秘密だけれど、
中学生の頃はそのアイドルグループのオーディションを受けたい、と真剣に考えていた。
トップにはなれなくても、端っこならイケるんじゃないかと。
でも、養護施設にいる娘じゃ落とされるに決まってるし、もし合格したとしても、芸能活動なんか三田村学園が許すわけがない……と履歴書を買うこともなく諦めた。
でも、今はアイドルよりも、自慢出来る夫と可愛い子供がいる主婦のほうが100万倍いい、と思う。
それほど毎日が楽しかった。
クリスマス、正月を順とともにヒロのマンションで過ごした。
ホームセンターで1999円のちゃちなツリー買い、100円ショップのキラキラしたオーナメントで飾り付けをした。
安っぽいそれを美緒は「宝石みたい!」と言ってはしゃいで、順を笑わせた。