名前を教えてあげる。
「…目を閉じて、教会の中を想像して。綺麗なステンドグラスが正面にあるんだ……
聴いてくれる?」
「…うん」
目を塞がれたまま、美緒はうなづいた。
「………私、中里順は、
五百部美緒を妻とし。
良いときも、悪いときも。
富めるときも、貧しいときも。
病めるときも、健やかなるときも。
死がふたりを分かつまで。
永遠(とわ)に愛し慈しみ、
貞節を守ることをここに誓います……」
ぱっ、と美緒の目の前が明るくなった。
「ああ、緊張した!シアトルで英語のスピーチした時より、100倍ヤバかった!」
順は、晴れ晴れとした顔でいう。
せっかく、順が愛を込めたスピーチしてくれたのに、美緒は最後までちゃんと聴いていなかった。
あまりにも嬉しくて、幸せで、
嗚咽が抑えられず、しゃくり上げてしまったから。
「…美緒もっ…順のっ……」
「無理しなくていい、そんなに泣かないで…赤ちゃんがびっくりしちゃうよ」
美緒の頭を優しく撫でる。
少し落ち着いたあと、一句一句、ゆっくりと宣誓した。
「美緒も……誓います。
どんな時も順のそばにいて、
一生、順だけを愛し続けます…
ずっとずっと、死ぬまで、男の人は順1人しか愛しません…」
お腹の子にも語りかけるように。