名前を教えてあげる。
「清いカラダ同士で結ばれた俺たちは、穢れのない神聖な夫婦なんだ。未来永劫、他の誰かと交わることはない……」
瞳を潤ませた順は、美緒の肩を両手で抱きよせた。
「美緒と赤ちゃんを、俺は全力で幸せにするから。不安がらないで、ついて来いよ」
年が開けて元旦。
美緒は、生まれて初めて雑煮作りに挑戦した。
作り方は順がネットで調べ、「関東風」を順とキッチンではしゃぎながら、味付けをした。
美緒も順も包丁を使い慣れていないから、野菜を切るだけで大騒ぎだ。
母子手帳も貰った。
順が学校を休んで、検診に付き添ってくれた。
妊娠後期に差し掛かって初めて受ける検診。医者や看護師には、たいそう驚かれてしまった。
経過は順調で、診察室で2人で手を取り合って喜んだ。
エコー写真で胎児を見たとき、美緒は人目も憚らず涙してしまった。
母になる喜びよりも、かけがえのない我が子をこの世から抹殺しようとしていた自分の罪深さを思い知ってしまったから。
そして、大勢の人のいる前でみっともなく泣きじゃくる自分を許してくれ、肩を優しく抱いてくれる男がいる。
妊娠が分かってからというもの、数え切れないくらい泣いた。