名前を教えてあげる。
もう見慣れてしまったはずなのに、久しぶりに見たせいか、働き盛りの男の色気に美緒はドキドキしてしまうのだった。
「あ、ヒロさん、お帰りなさい!
大阪はどうだった?晩御飯は?
クリームシチューならあるよ。食べる?」
着替えもせず、ブツブツ言いながら立ったまま仕事の手帳を繰るヒロに尋ねる。
その佇まいは、見れば見るほど哀愁のある魅力的な男だ、と再認識させられる。
順の話では、20代の頃から独身主義のヒロは、決して女性に深入りせず、浅く広く付き合うという。
クリスマスイブを共に過ごした女の他にも何人か付き合っている女がいるらしく、
『だから、マンションには絶対女を連れて帰らないんだよ』と順は教えてくれた。(なぜか得意げに。)
超イケメンは何をしても許されるんだ…とつくづく美緒は思う。
「飯はいいよ。軽く飲んできたから。
はいこれ、土産……といっても新幹線ギリギリで買う時間なかったから、駅地下で買ったベルギーワッフル」
「わあ!ありがと〜」
美緒に白い箱を手渡しながら、ヒロがちらりとテーブルに目線を動かした。