名前を教えてあげる。


「ディズニーランド?」


ネクタイを緩めながら、テーブルに散らかった写真の1枚を手に取った。


「違うよ!ディズニーシーだよ。
こないだ、順と行ったの。先週、私の誕生日だったでしょ。それに順、卒業式だったし。
ヒロさんがお祝いのお金くれたから、ダブル祝いで行こうってなって。
赤ちゃん生まれたら、当分遊べなくなるし。

私、ディズニーシーって初めてだったんだけど、すごく楽しかった!
お腹大きいから、乗り物には乗れなかったけど、パレード見てたら、隣にいた
知らないおばさんに、元気な赤ちゃん産んでねって励まされちゃった!
ね、ヒロさんは行ったことある?」


「おれ?興味ねえよ」


ヒロは、唇をわざと歪めながら、写真を何枚か眺めたあと、ワォッ!とオーバーに声を上げた。




「な、なんだ、これ?
ミョウのリボンのつけ耳は許せるが、順の奴までミッキーマウスの被り物なんかしやがって!
お前、そんな奴だったのかあ⁈
日本男子が情けねえ!」


1枚の写真をプルプル揺さぶりながら、まくしたてる。

美緒と順が、巨大な地球儀のフィギュアの前で撮影したツーショットだった。


端正なルックスなのに、ヒロは意外に剽軽なところがあった。
そのギャップに参ってしまう女は多いだろう。


「似合うんだから、いいでしょ!盛り上がんなきゃ!」


反撃する美緒の脳裏にふと『女殺し』という古臭い言葉が浮かぶ。




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