名前を教えてあげる。
「あ〜俺はぜってえ、女だと思うんだよね!だから『えりな』ちゃん!
これ、めちゃカワイイだろ?」
順は澄まし顔で、ビニールをビリビリと破り、ピンクのホワホワしたロンパースを取り出した。
お互い、付けたい名前を幾つか出し合い、一致したのが、男だったら
『剛(ごう)』女なら『えりな』だった。
「女だって。俺、10万賭ける!」
「あっ、言ったね?もう1回言って。ボイスメモで録音するし!」
「じゃ、女だったら美緒が俺に10万くれるんだな?」
「それ分割払い可?なら、やるよっ」
言い合う横で、ヒロがピンクのベビー服を両手で広げるように持ち、感心した声を出す。
「こんなにちぃせえのか、生まれたてって……怖いくらいだなあ…」
スーツ姿のヒロとベビー服の取り合わせがなぜだか可笑しくなって、美緒はぷっと吹き出してしまった。
「うわ…ヒロが持つとなんかやべえ」
順もからかう。
「なんでだよ!俺だって子供が嫌いなわけじゃねえよ。変質者扱いすんなって。ベビーカー買ってやんねえぞ!」
珍しくヒロがムキになって、美緒と順は笑い出した。