名前を教えてあげる。
出産したこの大学病院を訪れたのは、3ヶ月健診を受ける為だった。
そこで恵理奈の体重の増え方が、標準よりかなり下回っていることが分かった。
いくら頑張っても美緒の乳房からはあまり母乳が出ないのに、恵理奈は哺乳瓶の人工ミルクを嫌った。
「中里さん、この後、保健師の育児指導を受けますか?」
看護師の問いに、同席していた順が、
「よろしくお願いします」
と答えたせいで、こんな事態になった。
美緒は保健師という職業があるのを初めて知った。
人を待たせていることを忘れたかのようにその保健師とやらは一向に現れない。
美緒としては、早く家に帰って横になりたかった。
夜泣きの激しい恵理奈をあやす為に、昼寝をしておく必要があった。
順が仕事が終わって帰宅するのは、毎晩10時ごろ。
それから順は恵理奈と一緒に風呂に入る。
恵理奈が起きているかは寝ているかは半々で、寝ている時は抱き上げて強引に起こした。
(はじめは愚図ってギャン泣きするけど、お湯に浸かると大人しくなる)。
美緒1人で赤ん坊の入浴はあまりに重労働なので、順の帰宅を待つしかなかった。