名前を教えてあげる。
順と恵理奈の入浴が済んだら、次は美緒が風呂に入る番。
風呂の好きな恵理奈は、湯上がりのミルクを飲むととても大人しくなった。
その間に順は晩御飯を食べ、30分くらいで美緒が風呂から出るとバトンタッチするみたいに、美緒が敷いておいた布団に入る。
疲れ果てていた順は、あっと言う間に寝てしまう。
それからが美緒にとって地獄だった。
長い夜の始まり。
おかしなことに、恵理奈は新生児の時から『超夜型』で、昼間はスヤスヤ眠っているくせに、父親が寝ると同時にパッチリと目を覚まし、愚図りはじめるのだ。
ヒロの洒落たマンションを出て、古いアパートに移り住んだ。
順もそのタイミングで仕事を変え、ガソリンスタンドで働き始めていた。
幹線道路にあるスタンドだから仕事は一日中忙しく、接客マナーも学ばなければならない。
先月から「運転免許があれば、仕事に生かせるから」と自動車学校にも通い始めていて、多忙を極めていた。
順だって大変なのは、
美緒も分かっている。
家族の為に最大限の努力をしてくれている、と。
けれど、『こんなこと』をされると
泣き止まない乳飲み児を一晩中、抱き続けなければならないしんどさをぶつけたくなってしまう。