名前を教えてあげる。
「まあ、若いパパねえ」
「ほんと!お幾つなの?」
昼を過ぎ、仕事がひと段落したせいか2人の若い看護師が順を取り囲んで声をかける。
「俺ですか?……18っす」
組んだジーパンの長い脚の上に恵理奈を乗せたスタイルで、はにかんで答えた。
「え!18歳。すごい!」
「どうりで若いわけだあ」
看護師達は顔を見合わせて、はしゃいだ。
「赤ちゃん、お風呂に入れたりするの?」
「風呂は俺の担当です」
順が哺乳瓶を傾けたまま答えると看護師たちは、ひゃあ!今時だよね、とか、素敵なパパだよね、とか口々に順を褒めそやした。
「そんな見られると緊張しますよ。
やべ。手、震えてきた」
順が戯け、診察室が賑やかな笑いで溢れる。
美緒も連られて少し笑った。
顔の筋肉が固くなっていて、ぎこちない笑い方になってしまった。
順には華がある、と美緒は思う。
どこにいっても、順がいるだけでその場が明るくなるのだ。
「検査の結果、特に異常値は見られません。疲労じゃないかしら?
初めての赤ちゃんだからね」
中年肥りの女医は、カルテに書き込みをしながら言った。