名前を教えてあげる。
ーーーー妊娠している。
こんな事実は拒否したかった。
出産の時の下半身が千切れるかと思うくらいのとてつもない痛さ。
あんな体験はもう2度と嫌だ。
心当たりは充分にあった。
恵理奈を産んで、悪露(おろ)が治まるとすぐにセックスを再開した。
禁欲を強いられていた順は、毎晩のように短い時間で美緒を抱いた。
すると、すぐに1度目の生理が来た。
そして、このところ、美緒が買ってきたコンドームが順に合わず、いつの間にか取れてしまう、というアクシデントが続いていた。
それなのに、もったいないから、と新しいものを買うことをしなかった。
順は普通のものでは、窮屈で使えない、ということが時々あった。
赤ん坊を生んだばかりだから、大丈夫だろうと決め付けて、ほとんど避妊していなかった。
「…昼間のことだけど…本当に堕ろす?」
順がその話題に触れたのは、美緒が風呂から出たあとだった。
「ん….」
テレビを観ながら、濡れた髪をバスタオルでガシガシとやりながら短く頷いた。
バラエティ番組の馬鹿笑いが、部屋に虚しく流れる。