名前を教えてあげる。


紀香とは息が合う、というかノリが同じで、決して嫌な言葉をぶつけ合ったりしないから(美緒は争うのが苦手だった)話していると心からホッとした。


恵理奈が1歳3ヶ月、紀香の息子、龍亜1歳の時に知り合ったから、かれこれ5年ほどの付き合いになる。


美緒が光太郎と出逢う前、何度かお互いの子供を交えて『リトルマーメイド』で、カラオケをやった。


初めて美緒が紀香親子を店に連れて来た時、店長に「私の親友だよ」と紹介したので、紀香は店長と顔見知りだった。



「店長の奥さん、可哀想だよね~あんなおばさんと旦那が寝てるなんて、大ショック、ばれたら離婚モノだよね」


『アハハ!本当!免れないね~……』



今まで、笑いながら喋っていた紀香の声が突然小さくなった。


「どしたの?」


美緒が訝ると、『…気を悪くしないでね』紀香は言いにくそうに切り出した。



『エリなん…大丈夫かな?保育園でも皆、心配してるんだよね』


「やだ、心配って何があ?」


どきりとする。声が上ずるのを笑いで誤魔化した。


紀香は親しみを込めて、恵理奈をエリなん、と呼んだ。



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