名前を教えてあげる。
「順が生んでよ!私、働くから!恵理奈も育てて!
なんの仕事でもする!
稼げるなら、風俗だってやるから!
もう嫌なの!自由になりたい!
もともと赤ちゃんなんて好きじゃない!出来ちゃっただけなの!お荷物なの!」
感情が昂り、順を攻撃しないと気が済まなかった。
妻になるにしても、母になるしても、幼すぎることは自分自身がよくわかっている。
これ以上の重荷は無理だ。
「それ、本気なの…?」
順は悲しげな目で美緒を見つめ、掠れた声で訊いた。
美緒は、大きく頷いた。
「じゃあさ…」
順は、美緒の顔色を伺うような目をした。
「…うちの母親にしばらく恵理奈を預かってもらうのはどうかな?」
「はあっ?」
あまりに突拍子もない提案に美緒は呆れた。
「恵理奈を預ける?そんなことできるわけないでしょ?
順のお母さんは、私のこと憎んでいるんだよ?大事な一人息子を誘惑して、人生を狂わせた女だって!」
ーー普通のお嬢さんならこんなことにはならなかったのに………
美緒は裏切られた。順に似た優しい面差しをしたあの人に。
こんな時に順の母親のことなんか思い出したくもなかった。