名前を教えてあげる。


「順が生んでよ!私、働くから!恵理奈も育てて!
なんの仕事でもする!
稼げるなら、風俗だってやるから!

もう嫌なの!自由になりたい!
もともと赤ちゃんなんて好きじゃない!出来ちゃっただけなの!お荷物なの!」


感情が昂り、順を攻撃しないと気が済まなかった。

妻になるにしても、母になるしても、幼すぎることは自分自身がよくわかっている。
これ以上の重荷は無理だ。


「それ、本気なの…?」


順は悲しげな目で美緒を見つめ、掠れた声で訊いた。

美緒は、大きく頷いた。


「じゃあさ…」


順は、美緒の顔色を伺うような目をした。

「…うちの母親にしばらく恵理奈を預かってもらうのはどうかな?」


「はあっ?」


あまりに突拍子もない提案に美緒は呆れた。


「恵理奈を預ける?そんなことできるわけないでしょ?
順のお母さんは、私のこと憎んでいるんだよ?大事な一人息子を誘惑して、人生を狂わせた女だって!」



ーー普通のお嬢さんならこんなことにはならなかったのに………


美緒は裏切られた。順に似た優しい面差しをしたあの人に。

こんな時に順の母親のことなんか思い出したくもなかった。











< 150 / 459 >

この作品をシェア

pagetop